クラウドPBXが主流になりつつある背景
2024年1月、NTT東西の固定電話網(PSTN)が完全にIP化へ移行したことで、従来のアナログ回線やレガシーPBXの利用が難しくなり、クラウドPBXへの移行を検討する企業が増えています。
クラウドPBXは初期費用が安く、スマホやPCを内線化できるため、テレワークや外回りが多い企業にとっては非常に便利です。また、複数拠点でも一括管理が可能なため、導入スピードや拡張性に優れています。
しかし、クラウドPBXの多くは「サブスク型(月額課金)」です。毎月の利用料が積み上がるため、「長期的に使うと高くつくのではないか」「経営が苦しくなった時に削減できないのでは」と不安を抱く企業も少なくありません。
サブスク嫌い企業の本音とは?
中小企業を中心に、サブスクに対するネガティブな意見が根強く存在します。よく聞かれる声は以下の通りです。
「毎月固定費が積み重なるのが嫌だ」
10年単位で考えると、サブスク型PBXの費用は数百万円に膨れ上がります。一方オンプレミスPBXは、一度導入すれば毎月のランニングコストは最小限です
「所有資産が何も残らない不安」
買い切り型なら機器が手元に残り、資産として扱えるのに対し、サブスクは解約すれば何も残りません。
「経営が苦しいときに削減しにくい」
不要なサブスクは解約できても、電話や会計ソフトのような「絶対必要なもの」は削減対象にできません。
「契約縛り・値上げリスクがある」
サブスク契約は解約条件が複雑で、途中解約には違約金が発生する場合もあります。さらにサービス提供者の都合で値上げされる不安もあります。
「インターネット障害が怖い」
クラウドPBXはネット環境に依存するため、通信トラブルが発生すると電話が止まるリスクがあります。
40〜50代経営者がサブスクを嫌う理由
40〜50代のベテラン経営者は、「買って所有すること=安心」という価値観を持つことが多い世代です。バブル期や高度経済成長期を経験した世代は、「資産を残す」「長く使い倒す」ことが合理的と考える傾向があります。
また、過去に複合機やPBXのリース契約で「結局高くついた」「解約に手間がかかった」という苦い経験を持つ人も少なくなく、サブスクや月額制に対する警戒心が根強いです。
さらに、PBXや電話設備は10年以上利用できることが多いため、「一括購入で導入すれば10年後もほぼゼロコストで使い続けられるのに、毎月課金されるのは損」という感覚もあります。
40代以下経営者はどう考えるか?
一方、40代以下の経営者や管理職は「所有よりも利用」という発想が主流です
- 「必要なときに契約し、不要なら解約する」柔軟性を重視
- 保守・アップデートを業者任せにできる手軽さを評価
- 初期費用を抑え、キャッシュフローを守る経営判断を優先
また、デジタルネイティブ世代はクラウドサービスに抵抗がなく、「常に最新の環境で運用できる」ことを高く評価します。
ただし、「永遠に必要なサービス(電話や会計システム)」については、「長期コストが適正かどうか」を気にする傾向もあります。
クラウドPBX vs オンプレPBX vs ハイブリッド – 比較表
比較項目 | クラウドPBX (サブスク型) |
オンプレPBX (買い切り型) |
ハイブリッド型 |
初期費用 | 安い(機器不要) | 高い(機器・工事費用) | 中程度 |
月額費用 | ユーザー数課金で増減 | 固定費(保守・回線のみ) | 両方発生 |
通話品質 | ネット環境に依存(遅延リスクあり) | 高品質で安定 | コア部分は安定 |
保守・管理 | メンテ不要(業者側で更新) | 自社または業者保守が必要 | 部分的に保守が必要 |
拡張性 | 高い(ユーザー追加も即時) | 機器増設や設定変更が必要 | 中程度 |
テレワーク対応 | スマホ・PC内線が標準 | 難しい(VPN等が必要) | クラウド部分のみ対応 |
経費削減余地 | 毎月固定費→削減しにくい | 導入後は 低ランニングコスト |
部分的に削減可 |
導入スピード | 数日で利用開始 | 1~2週間(工事含む) | 1~2週間 |
経費削減の視点から見た最適解
経営が苦しくなり、何かしらのコスト削減が必要になる場面では、サブスク型は大きな課題となります。
クラウドPBXは解約すればサービスが止まり、削減余地が少ない固定費です。
長期的に見れば、オンプレPBXのほうが圧倒的にコストパフォーマンスが高いことが分かります。
結論 – サブスクに不安があるならオンプレPBXが有力
クラウドPBXは便利で拡張性が高い一方で、「毎月払い続ける負担」「経営難時の削減不可」「サービス依存リスク」という課題があります。
サブスク型に不安がある企業、特に中小企業にとっては、買い切り型のオンプレPBX(中古導入含む)が最も安心できる選択肢といえるでしょう。
ただし、将来的にクラウド連携やテレワークを取り入れる可能性がある場合、
「オンプレ+クラウドアプリのハイブリッド構成」という柔軟な導入方法も検討すべきです。